そもそも、税務調査はなぜ行われるのでしょうか。

言うまでもなく、日本には憲法が定める「納税の義務」があります。そして、国税の基本は「申告納税方式」です。納税する側が自分で税額を計算し、納税します。

ただし、納税者にはいろいろな人がいます。すべての人に対して公平に課税するためには、正しい申告がなされているかどうかを見るチェック機能が必要です。納めるべき人から正しく徴収しなければ、きちんと納めている人に対して公平感が保たれなくなってしまいます。

だから税務調査が行われるわけです。申告納税方式と税務調査は、車の両輪のようなもので、セットで日本の税制が動いています。

税務調査には自・黒・グレーの3つがある

税務調査では具体的に次の3つが行われます。

  1. 証拠書類の収集
  2. 要件事実の認定
  3. 法令の解釈適用

つまり、納税者に質問をし、証拠書類を集め、法律を当てはめて、更正・重加算税・青色申告の取り消しなどの処分をしていくのが税務調査と言えます。

ここで問題になるのは、3.法令の解釈適用です。というのも、税務調査には白・黒・グレーの3つがあるからです。

税務調査の「白」

税務上問題ないものです。

税務調査官にこのゾーンについて指摘されたら、毅然とした態度で対応しましょう。

その際には、法律・通達の解釈を税務調査官に示し、逆に何を根拠に否認するのかを税務調査官に聞きます。

税務調査の「黒」

税務上、問題のある部分です。

脱税なので、厳しい処分がなされます。この場合に論点となるのは、「隠ぺい仮装」かどうかです。

つまり、脱税の「形式」や「故意」がチェックされます。税金が減ると知りながら売上をごまかしたり、経費をねつ造したりといった不正行為があれば、最大7年間の重加算税というペナルティが課され、本来納めるべき税額の約2倍弱の金額を納めることもあります。

さらに、脱税額が3年間で1億円を超えると、査察・刑事事件になる可能性もあります。立件されると、各メディアに実名が報道され、経営に対する打撃はもちろん、経営者自身や家族に与える悪影響も避けられないでしょう。

「1億円といった大きな金額はやらないから大丈夫」ではありません。立件されて逮捕される人も、いきなり数億円を脱税することはまれで、初めは数100円の脱税を行い、結果、数億円の脱税となることが多いです。だから1000円でも100円でも、脱税はすべきではないのです。

税務調査の「グレー」

法律の形式上は問題がなくても「立法趣旨」「法律解釈」で白にも黒にもなるものがグレーです。

たとえば、本屋さんで「立ち読み禁止」という貼り紙がしてある場合、「座って読むのは大丈夫なのか?」ということです。 貼り紙どおりだと問題ありませんが、本屋さんの意図としては「本をタダで読むな」ということです。これと同じように税務解釈には幅があります。飲食代、消耗品費、交際費も、このグレーになることが多いです。

税務調査で、 税務調査官と交渉になるのがもっとも多いのは、 このグレーゾーンです。このグレー ゾーンは、 税務調査での交渉で結果が変わってくることが多いです。

グレーについて交渉する際、交渉の相手は税務調査官ですが、その背景には法律があることを忘れてはいけません。

基本的には、法律の解釈、また判例で税務調査官を説得しなければいけないわけです。さらに法律を解釈するためには法律ができた目的の立法趣旨まで遡る必要があります。

ただし、経営者が立法趣旨までマスタ-する必要はありません。顧問税理士にこの処理は立法趣旨を考えて大丈夫かといったことを問いかけ、グレ-な部分でしっかり事前対策をする必要があります。