一般的な税務調査の流れと、具体的な作業内容について確認しておきましょう。

税務署からの事前通知

事前通知がある税務調査の場合、会社に電話がかかってくるのが一般的です。税法では、原則として税務調査を行う際には、調査の目的、調査の対象となる税目、期間、調査を行う職員の氏名などを告げることになっています。


ただし、「事前通知事項の詳細は、税務代理人(税理士)を通してもらいたい」と申し立てると、直接通知を受ける必要はありません。例外としては、実地調査の対象が印紙税や関税の場合です。印税や関税は顧問税理士等が税務代理人となれないため、すべて通知を受ける必要があります。


「税務代理権限証書」の「調査の通知に関する同意」欄にチェックが入っている場合には、税理士の事務所に連絡がきます。一度、証書を確認してみましょう。


個人事業主の場合は、無予告で訪れたところ不在だったため、ポストに封筒が入っているケ-スもあります。

税理士とのミーティング・日程調整

事前通知があったら、なるべくすみやかに税理士とミーティングをしましょう。


税務調査に挑むにあたっては、課題が複数あります。経理担当者も税理士も人間ですからミスもあるでしょう。

課題をすべて解決したうえで税務調査を受けるのが鉄則です。ミーティングでは、いつぐらいに課題が解決できるか逆算して、税務調査の日程を決定しましょう。


「普段から税理士がきちんと記帳しているからミーティングは必要ない」と言う人もいますが、安心感と納得感をもって税務調査を受けるためにも、自主申告のためにも、ミーティングは欠かせません。

課題の取り組み

実際に、ミーティングで挙がった課題について解決していきます。この段階で自主申告できるのがベストです。

税務調査で必要になる書類などの整理も行いましょう。「領収書をあえて整理しないほうが、税務調査官が見づらくて諦めるのでは」と言う経営者がいますが、まったくナンセンスです。

面倒だからチェックをやめる税務調査官はいません。それより、見やすく整理しておいたほうが「この会社は大丈夫そうだ」という心証になり、税務調査が早く進みます。

臨場調査

税務調査官が会社や店舗などを訪れて臨場調査を行います。臨場調査が2日間にわたって行われる場合、次のようなスケジュールが一般的です。

1日目午前中:経営者のヒアリング。会社概要、取引内容、取引銀行、経営者の趣昧など、 一見、雑談かと思うようなことを交えながら話をしますが、考えなしに話をすると後々税務否認の決め手となることもありますので注意が必要です。事前準備としてリハーサルをして臨みましょう。

1日目午後:証葱類に基づいて、金額の大きい「売上」「収入」「外注費」「給与」などから調べていくのが一般的です。

2日目午前~午後:税務調査官が疑問点を経営者に質問しながら、税務否認の的を絞っていきます。

2日目夕方(16時前後):「講評」という形で、税務調査結果や今後の税務調査進行について話し合います。

臨場調査後の質問対応・争点交渉

税務調査官から受けた質問に答えたり、資料を提出したりします。修正申告に向けて、争点を交渉する段階です。争点の交渉については、通常、税理士が中心になって進めます。

修正申告・更正等・納付

決定した事柄について、修正申告または更正などをし、納付を行います。

突然税務調査が来たら?

なかには事前通知なく税務調査官が訪れ、税務調査をしたいと言われる無予告調査もあります。

無予告で臨場調査を行うということは、独自調査によって税務調査官が何か情報をつかんでいる可能性があるということです。

経営者にとっては非常に危慎すべき事態ですが、決して取り乱したりしないこと。落ち着いて対応することが大切です。

たとえば他の従業員がいたり、店舗でお客様がいらしているような場合、「税務調査に入られた」というだけで、不安にさせてしまったり、妙な噂になったりする可能性があります。通常の顧客対応と同じ態度で、社長室や応接室などの別室に案内しましょう。 別室に入ってから改めて挨拶を交わし、税務調査官の身分証明書、また税務調査の理由を確認します。そのうえで、「その日に対応するか否か」を判断します。

営業上のアポイントがある、体調が優れないなど正当な理由があれば日程の変更をお願いすることも可能です。「これから外出の予定がある」など営業上の理由を伝え、改めて日取りを決めて、出直してもらいます。

当日中に税務調査を受けるにしろ、断るにしろ、すぐに税理士に連絡を取ることも大切です。

そもそも、無予告調査の目的は、「証憑類等の隠ぺい等の防止」「事実の確定」「経営者に脱税の事実を認めさせる質問応答記録書を書いてもらう」です。

税理士が来る前に、税務調査官が作成した質問応答記録書に不本意にサイン・捺印すると、質問応答記録書が不利な証拠書類となってしまいます。注意してください。

誤解している人もいますが、無予告調査といっても任意調査です。鍵をかけている敷地に無理に入ってきたり、勝手に引き出しを開けたり、コピ-機を触ったりすることなどはできません。強引に税務調査を始めることはできないため、その場合には違反行為を指摘して、やめてもらいます。

もし、経営者が不在の際に税務調査官が来たら、「対応できない」ときっちり伝えます。この場合、スタッフが断ることになりますので、あらかじめこの対応法をスタッフに周知しておく必要があります。