税務調査の事前通知が来たら、なるべく早急に経営者・経理担当者・税理士の三者でミーティングを行います。その際には、次の事項についての対応を話し合い、対策を実行しましょう。

過去の税務リスクの洗い出し

経理処理でミスがないかなど見直して、指摘されるリスクのあるものを洗い出します。以下は税務リスクのヒントです。

・申告書・元帳等の帳票類・領収書・通帳の準備

調査官の指示のある年度分(通常3~5年)を用意します。また、「棚卸資産の評価」「減価償却の方法等の届出書」など、過去の届出書・申請書も準備しておきます。

・売上・仕入れの計上時期

期間損益のずれで税務否認されることがありますので、期末の売上・収入の計上時期や計上方法について確認します。

・固定資産台帳にある資産

税務調査官は「個人で買った資産を会社で計上していないか?」「架空の修繕費(資本的支出)を計上していないか?」を確認しますので、資産をすぐに提示・説明ができるようにしておきます。

・組織図や座席表を確認

給料を払っている人と組織図・座席表が一致するかを見る場合がありますので、整合性を確認しておきます。

・一定額以上の会計レビュ-

業種などによっても異なりますが、少なくとも100万円以上の取引はすべて税務上、問題ないか、必要な書類が揃っているかなどをチェックします。

・売上・仕入れ、外注費・棚卸資産その他金額が大きい取引の元資料の整合性

税務調査官は元帳を確認しますが、証憑類も照らし合わせますので、整合性がとれているか、ヌケがないかなどチェックします。領収書・請求書等を紛失している場合には再発行してもらいましょう。

・支払額が3万円以上の領収書の確認

支払額が3万円以上の場合には、消費税の仕入税額控除に関連する請求書・領収書等に厳しい要件があります。「支払先の名前等」「支払った年月日」「取引の内容」「金額」が請求書・領収書等に記載されていないと、消費税の仕入税額控除が認められませんので、この要件に不備があれば、再発行してもらいます。

なお、法人税・所得税については「取引の事実」が証明できれば、上記要件を満たしていなくても損金・必要経費に計上することができます。

・契約書・議事録等の見直し

特に業務委託に関しては、委託業務ごとに契約書があるか確認します。契約書等は、適正な印紙が貼られているかもチェックしましょう。印紙税のペナルティ(過怠税)は印紙税の2倍と大きな額です。

ただし、過怠税の決定を予知してされたものでないときは、「印紙税不納付事実申出書」を提出することで、過怠税が印紙税の10%になります。

また議事録に記載してある役員報酬と申告元帳に記載してある役員報酬の金額が合致しているかを確認します。

日程調整

過去の証憑類などを見直せるか、リスクに対して対策が取れるか、契約書など必要書類を揃えられるかなど、事前の準備を完了させる時間を見積もって、税務調査の日程を調整します。

整理

事務所にあるものは基本的に事業に関連するもののはずですので、質問検査権のある税務調査官が「見たい」と言った場合は見せなければいけません。もしプライベートなものが事務所にある場合には、すべて持ち帰るなどして整理しましょう。

臨場調査中に「これはプライベートなものなので、見られると困ります」などと言ってしまうと、誤解を招く可能性があります。

細かいことでは、事務所内にあるカレンダーなどもチェックします。たとえば内訳書に記載のない銀行のカレンダー等があれば、「その銀行口座に簿外資産があるのではないか?」と見られるわけです。税務調査官が気にしそうなものについては、税務調査前に整理しておいたほうが無難と言えます。

なお、自宅で税務調査を受ける場合には、リビング等税務調査官を案内する部屋に資料を並べて集めておきます。税務調査官に資料を求められた際、寝室に資料を取りに行ったりする「事業に関連する資料があるなら、寝室も見せてください」などと言われかねません。

リハーサルを実施する

税務調査では、必ず質問される事項があります。これらについては、きちっと答えられるようにしておきましょう。

加算税を最小にする

過去の帳簿の洗い出しなどで「黒」と判断されるミスが見つかれば、事前に修正申告をして加算税を最小にします。

「10年職歴」を使った税務調査官の傾向と対策を立てる

株式会社税経という会社から、「10年職歴」という名簿録が発売されています。国税職員は毎年7月に定期異動が行われて、2~3年おきに配属先が変わるとことが多いです。税務調査官の経歴や所属部署などから、傾向と対策を考えます。

「10年職歴」は国税局別になっているので、自分の管轄の国税局のものを購入するとよいでしょう。おおむね10月初旬頃から、順次発売されていきます。

従業員への事前説明をする

従業員の中には、不安がる人や「税務調査が行われる会社が脱税している」と誤解する人もいますので、「定期的な任意の調査が入りますが、業務には影響しません」など、説明をして理解を求めるとよいでしょう。

また、臨場調査では、従業員の机の中などを見られる場合がありますので、おり、個人的な持ち物などは持ち帰るなど整理をしてもらいます。

価値を最大化するための意思統一をする

税務調査は、納税者と税務調査官の互いの価値を最大化すること、ウィン・ウィンで終えることが大切です。そのためには、あらかじめ次の事項について税理士と話し合って、意思統一しておきましょう。

妥協できるゾ-ンと妥協できないゾ-ンの把握

リスクの洗い出しなどをしていると、税務調査時の争点がある程度推測できるはずです。この争点について、妥協できるゾ-ン、妥協できないゾ-ンをあらかじめ打ち合わせておきましょう。また、妥協案についても考えておきます。

一般的には、目標設定が高いほどよい結果が生まれると言われます。ただし、目標が高すぎる場合、結果との差額を不満に感じてしまいますので、ちょうどいいところに設定します。一般的には、達成可能な20パ-セント程度上のところぐらいでよいでしょう。