進化するASVで、ドライブ全快に!

ASV(先進安全自動車)についてと紹介しますが、自動車の安全に閲する技術開発はめざましく、より進化した機能を搭載したASVが登場しています。今回は、ASVを支えるアクティブセーフティ技術の進化点や標準搭載への動き、そして、ドライバーが陥りやすい冬季のドライブに潜む危険などについて、ご紹介いたします。

アクティブセーフティとASV

自動車の安全性向上に不可欠な技術自動車を運転する方なら、誰でも一度やニ度、“ひやり” とした経験があるかと思われます。とっさに適切な危機回避行動が取れるかどうかは、ドライバーの技量によって大きな差があります。こうした危険な状況を未然に回避し、ドライバ-の安全運転をアシストしてくれるのがADAS(先進運転支援システム)であり、この安全技術を搭載した自動車ASV (先進安全自動車)と呼ばれるものです。「ぶつからない自動車」として、衝突被害軽減ブレーキなどの機能が知られていますが、まずは基本となるアクティブセーフティ技術の進化からご紹介いたします。

・進化するASV

レーダーシステムの主流は「赤外線」から「ミリ波」へ

ASVに搭載される技術は日々進化しています。例えば、衝突回避のためのセンサーは、ローコストな赤外線レーザー方式から、より高性能なミリ波レーダーや光学式カメラを組み合わせて使うものへと主流が交代しました。ミリ波レーダーは赤外線レーザーに比べ、雨や霧、逆光などの影響を受けにくく、光学式カメラのみの場合に比べ、組み合わせて使うと夜間の障害物の認識性が.向上します。メーカーによって性能差はありますが、赤外線レーザーが約30m先の障害物を検知するのが限界なのに対し、ミリ波レーダーは約100m先でも検知可能と言われています。

レーダーと連携して衝突回避

このミリ波レーダーとカメラを使った衝突回避機能も進化しています。初期は、障害物の検出時にドライバーへ警告を発し、ブレーキの踏み込みなどドライバー自身の衝突回避操作が充分であればブレーキ圧を高めるなどして、ドライバーの操作をアシス卜するというものでした。それが、警告に対するドライバーの反応が遅れた時に自動的にブレーキをかけ衝突被害を軽減する仕組みへと進化し、現在は、緊急時には自動的にブレーキを制御し車両を減速・停止させるシステムへと進化しています。さらに、ミリ波レーダーとカメラを組み合わせ、歩行者を認識し、回避操作をサポー卜する高度な検知機能も実用化が進められおり、一部メーカーでは次期型車両より正式採用される予定です。この他にも、衝突回避のためのセンサーを使い、停止状態から発進する際に前方の壁などを認識。アクセル出力を抑えることでドライパーのペダルの踏み間違い事故を防ぐ技術についても、搭載される車両が増えています。対向車に優しいヘッドライトヘッドライトのロ-・ハイビームを自動で切り替える「自動切替型前照灯」も進化しています。従来は、ハイビームでの走行時に先行車や対向車のライトを検知すると自動的にロービームに切り替わるというものでしたが、最新技術では、先行車や対向車のドライバーがまぶしく感じる領域を判断し、部分的に光量をコントロールするシステム(配光可変ヘッドランプ)へと発展しています。

・行政もASVを後押し

ASVの開発については、国土交通省でも推進検討会が継続的に持たれてきました。ドライパーのより安全なASV利用と、各自動車メーカーのより安全な自動車開発を後押しするため、2014年度からは「予防安全性能アセスメント」が新たに開発されました。このアセスメントでは、[衝突被害軽減ブレーキ][車線はみ出し警報][後方視界情報]などについて、試験を行っています。各自動車メーカーにおいても、安全技術のオプションから標準装備化への対応が進められています。特に衝突被害軽減ブレーキについては、欧州では標準装備化されており、日米のメーカーでも標準装備化が加速すると考えられます。

・路面の状況を見極める

さて、ここからはASVでも気をつけなければならない冬季の安全運転についてです。寒冷地にお住まいの方々は、経験から積雪路・凍結路の走り方を身に付けていらっしゃいますが、降雪の少ない都心などの方は、積雪路などの走行に慣れていません。また、積雪が.なくても、氷点下まで冷え込んだ夜間や早朝、場所によっては気温がマイナスにならなくても路面の凍結が起こることがあります。特に橋の上やトンネルの出入り口は、路面が凍結しやすい上に横風を受けやすく、横滑りや車線のはみ出し、追突などが多発する場所です。交通量の多い道路でも、交差煮付近は多くの自動車が強隼・停止を繰り返すため、路面が磨かれてアイスバーンになっていることがあり、ブレーキが一旦に利きにくくなったり、ハンドルが利かなくなったりする危険ポイントです。こうした状況に、ABS(アンチロックブレーキシステム)などを搭載した車は心強い存在ですが、かといって過信は禁物です。衝突の可能性が.ある時に回避操作をアシストする衝突被害軽減ブレーキなどがあっても、路面の状態によっては停止できません。

雪道の危険ポイン卜

・技術を過信しないことも大切

ASVは絶対の安全を保証するものではありません。状況が性能の限界を超えた時などは、装置が作動しない、作動しでも充分に機能しない事態が起こり得ます。例えば、凍った道をチェーンを付けずに走行すると、衝突被害軽減ブレーキが作動しでもタイヤの摩擦力が低いため車両を停止しきれないことが起こります。タイヤと路面の摩擦係数が極端に低いアイスバーンなどで、減速はできたものの完全に停止できず、道路の傾斜などでずるずると動き続けるような時は、ABSとて役に立ちません。

ASVに搭載されたADAS(先進運転支援システム)はドライバーの心強い味方ですが、過信は禁物。冬季のドライブにおける危険ポイントを予め理解しておくこと、そして、状況に応じスタッドレスタイヤやチヱーンなどを装着する基本的な対応を怠っては、ASVも安全性能を発揮することができません。

・安全運転の基本

まずはタイヤからあまり雪の降ることのない地域では、少しの降雪でも道路交通が大混乱に陥ります。また、首都圏でも日陰となる場所や高速道路などでは、路面が凍結することは珍しくありません。こうした時に道路で立往生している自動車を見ると、ほとんどがノーマルタイヤを履いたままとなっています。降雪に不慣れだと、少しの積雪であれば大丈凍結路はアウトとなります。

オールシーズンタイヤの注意点

雪道でノーマルタイヤはNGとは言え、タイヤの履き替えは手聞がかかるものです。

そこで最近注目を集めているのが、欧米などで人気の冬季を含め一年を通じて使えるオールシーズンタイヤです。性能的にはノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの中間と考えられます。ただし、あくまでも積雪路の走行のみを考屈したタイヤで、凍結路ではグリップ力を得られないので、使用には注意が必要です。

凍結路に強いスタッドレスタイヤも、4輪すべてに装着しないとグリップ力を充分に発揮できません。前輪だけ、後輪だけをスタッドレスタイヤにすると、ブレーキの利きが甘くなり、ハンドリングも効かなくなります。

スタッドレスタイヤ装着の注意点

タイヤの間違った使い方

タイヤを替えず走ってしまいがちですが、シャーベット状の雪が路面に残る程度でも、ノーマルタイヤでは安全走行は望めません。いくら自動車が高性能となっても、ドライバーが安全走行の基本をおざなりにしていては、事故は回避できません。また、雪道の交通ルールについては、各都道府県公安委員会がドライパーの遵守義務を定めています。例えば、宮城県では雪道をノーマルタイヤ(タイヤチェーン未装着)で走行してはいけないと定めています。寒冷地に向かう場合はもちろん、近郊でも降雪の予報が出ている場合などは、スタッドレスタイヤを装着する、チェーンを用意するなど、万全の準備の上で走行するようにしましょう。

ASVに搭載されたアクティブセーフティ技術は今後も進化を遂げて自動車の安全性も一層高まっていくことでしょう。しかし、自動車はあくまでもドライバーが操作するもの。状況に応じた適切な判断と整備を怠らないことで、より安全で快適なドライブを楽しむことができるのです。