余計な回答が多い

いろいろと話をしすぎて、余計な回答から痛くもない腹を探られることがあります。たとえば、税務調査官から昔の話について聞かれ、税務調査にまったく関係のない自分の苦労話をしてしまう納税者がいます。雑談で相手に共感を得てもらうことは大切なことではありますが、税務調査が長引くことがあります。

また、取引先について聞かれて、取引先のグチや仕事内容についての不満を延々と語る人もいます。従業員のグチについても同様です。これらは税務調査とはまったく関係がなく、信頼関係を築くどころか、人間性を疑われる可能性すらあります。

敵対的な態度をとる

納税者と税務調査官は、一部で利益相反する立場です。ただし、交渉の基本は価値の最大化です。互いの価値を最大化するために、不遜な態度でいても効果はありません。自分を客観的に見て、敵対的な態度になっていないかどうかチェックしていきましょう。

不明確なことを言う

税務調査では聞かれたことに答えていきますが、質問に対する答えはイエス・ノーだけではありません。「わかりません。調べて後日お答えします」という回答もあります。

税務調査官は行政記録としてメモをとっています。あやふやなままで、イエスまたはノーと言って、それが間違いだったりすると、話の信憑性、経営者自身の信頼が失われてしまいます。

明確でないことは「後日調べてお答えします」にしましょう。私たちが税務調査で目的とするのは、「納税額をできるだけ少なくする」ことです。また、「できるだけ税務調査を早く終わらせる」ことも大切です。この目的から逆算して、質問には、端的に結論を話すようにしましょう。常に「この会話は目的達成のために効果的か?」を自問自答しながら話をする必要があります。

税務調査時の発言

税務調査のときには発言するとマズイこともあります。

①「前回の調査では問題なかった」
前回の税務調査では是認されたという主張は、よく納税者がする発言です。ただし、「是認された」は、「否認されなかった」とまったく同じ意味ではありません。前回は特に指摘されなくても、今回も同じように大丈夫だとは言い切れません。最悪の場合、「前回の税務調査ではそこは確認していなかったので、さかのぼって調査しましょう」と言われてしまう可能性もあります。

②「他の会社もやっている」
他の会社も同じことをやっている、というセリフは、まったくもってナンセンスです。他の会社がやっているから、自分の会社もやっていいとはなりません。税務調査官が「その会社の名前を教えてください」と言われて終わりでしょう。
税務の判断基準は、あくまで法律です。他の会社ではありません。

③「税理士がいいと言った」
このセリフを言ってしまうと、税理士が経営者の敵になってしまいます。たとえ本当に税理士が言ったことであっても、その税理士を選んだのは経営者です。すべての経営判断は、経営者が責任を取らなければいけません。

高圧的な税務調査官への対応方法

多くの税務調査官は普通の対応をしてくれる人ですが、残念なことに、なかには高圧的だったり、態度が少しおかしな人はいます。とはいえ、これは税務調査官に限った話ではなく、どこの組織でも同じと考えてよいでしょう。全体のおよそ別%くらいの人が個性的なキャラクターという感覚です。

① 相手の立場を尊重する
具体的には傾聴する、支援する、励ます、尊敬する、信頼する、相手を受容する、意見の違いを交渉することです。

このような税務調査官が来てしまうと、税務調査が対応しづらくなるのは事実ですが、次のような対応でものごとが前に進みます。

② 影響力を無視して問いかける
「こんな処理、合っていると思うのか?」などと、税務調査官から大きな声で言われたりすると、ついつい「お前は間違っている」と責められている、ケンカを売られているように感じるかもしれません。しかし、その言葉づかいや声のトーンの影響は考えないようにしてください。問われているのは、「会計処理が合っているか否か」というシンプルなものです。

「この経理処理が合っているかどうか、聞きたいですか」高圧的な税務調査官を尊敬、信頼することなどできないと感じるかもしれません。しかし、日本の税制度は、申告制度と税務調査が2本柱となっています。税金が正しく徴収されることで、国が維持されているのです。

税務調査は尊い仕事であることは間違いありません。相手のキャラクターに焦点を合わせるのではなく、相手の税務調査官の仕事について尊敬の心を持って対応しましょう。

家族や従業員との関係をイメージすれば、相手の荒い言葉に反応してカツとするよりも、気持ちや立場を理解して話を聞き、共感し、前向きな方向へ向かわせたほうがよいことはすぐに理解できると思います。

③税務署長・総務課長・納税支援調査官に相談する
どうしても我慢ができない、この税務調査官ではストレスが大きすぎる、という場合には、 最終的に税務署長・総務課長・納税支援調査官などに相談することもあります。文書で出して高圧的な税務調査官がインターフォンを押さずに入ってきた場合などにも、税務署長あてに文書を書くと、担当の調査官を代えてもらえたりすることがあります。

パソコンを使ってその場で議事録を作ってよい

税務調査は2週間で終わることもあれば、半年に及ぶこともあります。時間が経つと、いつ、何について、どんな発言をしたか、正確に記憶することはできません。記憶より記録を大切に、必ず議事録をつけるようにしましょう。

以前は、税務調査中にパソコンで議事録をとっていると嫌がる税務調査官もいましたが、最近は止められることはありません。

議事録は必ず作ろう。 税務調査では、必ず議事録をとって、やりとりをきちんと記録することが大切です。できれば、経営者・経理担当者・税理士による事前ミーティングからすべて記録を取るようにしましょう。

争点が多いときには交渉経過一覧表を作る。 ちなみに税務調査官も争点整理表を作成することがあります。

争点整理表には作成基準があり、実質基準(調査に非協力的など、立証がむずかしい事柄を記録に残す)と、形式基準(重加算税が課されたり、青色申告の承認が取り消されたりなど)にあてはまれば作成します。

さらに、実質基準、形式基準のどちらにも該当しないケースでも、調査着手後3ヶ月が経過すると争点整理表を作成しなければいけません。ただし、税務調査官には、できれば争点整理表を作成したくないという気持ちがあります。

そのため、税務調査官にとっては調査を3ヶ月以内に終わらせたい心理があることも知っておきましょう。
議事録をまとめたうえで、争点が多い場合には「交渉経過一覧表」を作って、税理士と共有しましょう。

その場でサインせず交渉の材料にとっておく

税務調査で大きな論点となるひとつに、「質問応答記録書」があります。質問応答記録書とは、課税要件の充足性を確認するうえで、重要と認められる事項について事実関係の正確性を期するため、その要旨を記録し、統括官等に報告するために税務調査官が作成する行政文書のことです。

質問応答記録書は書くべきか?

・所得税・法人税の調査において、調査対象者と取引先等の間で、取引等に関する回答に齟齬が認められる

・所得税・法人税の調査において、外注費計上の根拠として提出された役務の提供を約した契約書について、納税者に具体的内容を質問したところ、実際には役務の提供の事実がないと契約書について、の回答があった。

たとえば次のようなケースで質問応答記録書を作成しようとします。
税務調査中に話した内容をこのように記録してあり、最後に読み上げて、問題がなければ「相違ございません」と納税者がサインをします。
質問応答記録書には、税務署の署内に作成の手引きがあります。たとえば「質問に応答しない場合には、応答しなかったことを書いておく」などと作成の仕方が書いてあるわけです。質問応答記録書は必ず作成しなければいけない書類ではありませんが、税務調査官が「重加算税を取りたい」と考えたときは、ほぼ作成されるものと考えたほうがよいでしょう。

ただし、質問応答記録書は法律上、必ず作成しなければならない文書ではありませんので、

納税者がサインをする義務もないということです。当然、サインしないからといって、罰則もありません。

「これは任意の行政文書ですよね。署名捺印しなければならない義務、法律根拠はありませんから、現時点では署名捺印はいたしません。税務調査の終了時に、総合的に勘案して判断させてください」とことわることが可能です。

・相続税の調査において、申告財産に含まれていない自宅現金の帰属について相続人に質問検査等を行ったところ、被相続人名義の預金口座から出金した現金であったとの回答があった。

もし、納得できない質問応答記録書に署名捺印してしまったら、内容を確認して修正してもらうようにしましょう。これを拒否された場合、個人なら「保有個人情報開示請求書」を提出する、法人なら税務調査官に「修正する権利がある」と主張して内容を確認します。

税務調査の結果説明の際に提示してもらうのも方法の一つです。確認する際には、「質問と回答が事実だったかどうか?」に注目してください。たとえば、回答の中に、一般的には納税者が使わない税務の専門用語が混じっていたりすると、「税務調査官の誘導尋問で、自分が答えたことではない」と主張することができます。また、「このグレーの部分をシロにしていただければ、質問応答記録書にサインします」などと、交渉のカードに使うことも可能です。

税務調査官が重加算税にしたいときには、質問応答記録書に次のようなワードが入ることが多いです。注意しましょう。
・意図的に〜
・〜を仮そうして
・〜を隠ぺいして
・事実と異なると知りながら〜
・不正の目的で〜

納税額に影響するかどうか

税務調査の最終折衝にさしかかったら、税務署から指摘された内容を分類して、「納税額に大きく影響するかどうか」整理をしていきます。

その期の経費になる修繕費を「資本的支出である」と否認され、棚卸資産として計上しても、減価償却費で期をまたぐが最終的には損金になります。そのため、是認を検討してもよいでしょう。

たとえば期ズレ(本来計上されるべき年度とは異なる年度で計上されている状態)について指摘されたとしたら、何の期ズレなのかで分類します。

売上、減価償却費、修繕費、棚卸資産などは、今期に認められなくても、トータルでの納税額には大きく影響しません。加算税の問題はあるものの、数年単位で見ると所得としてはほぼトントンになります。

調査結果が出たら、修正申告する

税務調査の最後には、必ず調査結果の説明がされます。

ここで是認なのか、否認なのかがわかりますので、否認である場合には修正申告をするのか、税務署側に金額を決めてもらう更正決定をしてもらうのかが選択できます。

基本的には、税務調査官が更正決定するのは手間がかかりますから、修正申告をすすめられるケースがほとんどです。ただし、修正申告をすると、修正申告に対する申し立てはできません。そのため、決定事項に納得したうえで修正申告するようにしましょう。

一方で、交際費、役員報酬、寄附金、使途秘匿金などは、否認されると損金として認められません。できればその期に損金として計上したいので、交渉していきたい項目です。

税務調査後に更正決定をし、内容に不服がある場合には、審査請求制度を利用します。通知から3ヶ月以内に直接、審査請求するか、税務署長に対して再調査の依頼をします。

審査請求の場合、国税不服審判所に対して行います。9割以上は1年以内に裁決が下ります。ただし、国税不服審判所に審査請求しても、認容されるのは年々、減っているのが実際のところです。以前は10%を超えていて、平成20年度、21年度は14%を超えていますが、近年では10%を割ることが多くなっています。そのため、原則は「不服があれば審査請求しよう」ではなく、「税務調査で勝負して、納得いく結果にする」と考えておいたほうがよいでしょう。