すでに焼肉ブームはひと段落し多様な食材を安い価格で提供するような居酒屋のような店舗に人気が移行している。

現在の統計での事業所数約3万事業所・従業者数約18万人は毎年減少傾向にある。

理由は大手企業によるロ-ドサイドでのチェーン展開の影響を受けた独立個人店の撤退で廃業事業所数は新設事業所数を上回っている。

焼肉店は、素材提供型業種であり,いかに人件費を圧縮できるかが収益力アップに影響する。

従業者数「1~4人」規模の事業所が全事業者数の5割強を占めるが, そこでの常用従業者の構成比は2割にも満たない。

経営改善のポイント

① 人件費の負担を抑える

素材提供型業種の典型である食材は、客が調理し, 厨房内での加熱調理作業が少ないために従業員の負担が比較的少なく、パート・アルバイト等に任せることができる。

よって、常時に投入する従業員を限定して人件費の負担を抑えることが収益力向上のポイントとなる。

② 食材の開発で差別化を図る

食材はメインが肉であり,素材のバラエテイも限定されているために同業他社との商品面における差別化が難しい。

市場では、多様な品質・価格の牛肉が流通しており、豚肉や野菜を使用するメニュ-開発が求められている。

差別化のために安全で安くそして美味しい新食材の開発がポイントとなる。

③ 食材の安全情報を公開する

米国産牛肉やタイ産鶏肉等をどう取り扱うかが課題となっている。

顧客に安心して利用していただくために, 提供している主要食材について積極的に原産地表示を推進するとともに 国産牛肉の個体識別番号店頭表示を行う。

女性客や家族連れが増加しているので,清潔で明るくて親しみやすい、女性に好まれる雰図気の演出と,家族連れが安心して利用できる店舗作りが肝要である。

そのためには価格帯を抑えつつ, サイドメニューやデザートにカを入れることがポイント。

女性は男性や上司・同僚と同行することが多く,売上高・収益力の向上に寄与してくれる。

女性やファミリー客は “自分だけの店” を積極的に利用する傾向があるので, “あなただけの店” の演出が人気店になるための最重要企要素である。

④品質で差別化を図る

独立個人店は経営資源に乏しいため, 大手企業と対等に戦うことは難しい。対策としては. 個人経営店でなくてはできないきめ細かいサ-ビスや高い品質の提供等で差別化を図ることが必要。さらに、店舗への設備投資を過剰にすることなく, 料理の内容で固定客をつかむことが生き残るための必要粂件となる。

税務処理のポイント

①収益の計上

焼肉店は一般の飲食店同様に現金での売上げの他、クレジットカードによる売上げも割合としては多い。

クレジットカードによる売上げの場合, カード会社の締め日に応じて,後日指定した口座に入金される。

その際に加盟店手数科等として,3~5%前後の手数料が差し引かれた後に入金されるため,入金金額をそのまま売上げとしてしまうと,売上金額が過小となり ,特に消費税の計算の際に問題となることが多い。

また, 売上計上時期と入金の時期が異なるため, カード会社の入金明細を確認し,どの時期の売上げに該当するのか確認することが求められる。

②棚卸しの計上

焼肉店では肉等の仕入れはもちろん野菜・海産物・酒類と通常の飲食店同様の仕入は多品種に及ぶ。特に棚卸し等の際に忘れがちなのが、調味料や酒類等である。調味や酒類に関しては、未開封のものはもちろん、開封してあったとしても残量が半分以上ある場合,一つとして数えることが望まれる。

また,消費税の免税率業者・税込経理を行っている事業者に関しては. 棚卸集計段階で消費税分の計上が漏れがちであるため, 注意が必要である。

 ③クーポン券や割引券の処理

焼肉店でも通常の飲食店等と同様にクーポン券や割引券を利用して集計を行うことが多い。

最終的に顧客から受領する金額は割引後の金額であるが,経理上は割引前の計上額を計上しクーポン等の利用分に際しては売上値引き等として別に計上することが望ましい。

④設備投資と設備の入れ替え

焼肉店は,通常各テーブルに鉄板や網が備えられガスや排煙のための配管設備が必要なため,ある程度まとまった初期投資が必要である。

また,鮮度が重要な肉等は冷蔵もしくは冷凍でストックしておく必要があるため,業務用冷凍庫等も必需品である。一般の欽食店に比べ内装の汚れや傷みが激しいため,固定資産に関しては最初にある程度細かく分けて固定資産台帳に記入しておくことにより, 内装や設備の入れ替えをスム-ズに行うことができる。

⑤消費税に関する注意点

従業員の負担

焼肉店においても通常の飲食店同様、従業員が営業時間の合間に食事をとることが多く,いわゆるまかない等が提供される。

賄いといえども店の売上げと変わりないため,すべて課税売上げに該当する。

それに対し社員寮等の従業員の負担分に関しては、賄い等と異なり非謀説売上げに該当する。

消費税の区分けをするためにも。従業員の給与から控除する際,何の控除であるか明確にする必要がある。

総額表示と値付け

売上に係る消費税に関しては総額主義がとられているため、消費税の課税事業者に途中で変更になったからといって、消費税分を値上げすることが非常に困難です。

新規開業時には消費税分を考慮に入れた値付けをしましょう。