<働き方改革の経緯>

働き方改革は、平成28年8月3日に発足した第3次安倍再改造内閣において、日本経済再生に向けた「働き方改革担当相」が新設され、 平成28年9月から平成29年3月まで開催された「働き方改革実現会議」が発信源となっています。

この会議は、 少子高齢化が進み生産年齢人口が減少傾向にあること、労働生産性が諸外国と比較して低い順位となっていること等によって経済回復が足かせとなっているため、 安倍首相が「日本経済再生の最大のチャレンジ」として開催されたものです。

<同一労働同一賃金>

上記の働き方改革実現会議において、 日本経済の再生を阻むいくつかの要因と改善策について話し合われました。 その中でもトップに挙げられたのが「同一労働同一賃金」についてです。

我が国における労働者の構成として、 いわゆる正社員といわれている「正規労働者」とパートタイマーやアルバイトなどの「非正規労働者」の2つがあります。 この二者は同じ従業員(労働者)であるにもかかわらず、 その処遇差は大きく不合理なレベルであると判断されました。

この不合理な処遇差によって、 非正規労働者は「頑張ろうという意欲をなくす要因となっている」 ので、 正当な評価をすることによって非正規労働者に「納得感を与え、 ヤル気を起こし、 ひいては労働生産性が向上していく」であろうという考えから、 同一労働同一賃金を実現しようという流れが起 こったのです。

賃金を実現するためには、 非正規労働者の「何が不合理なのか」を具体的に定めることが重要であると会議の中で提起され、 平成28年12月に同一労働同一賃金に向けたガイドライン(案)が策定されました。

このガイドラインは中小企業の方もわかりやすいように典型的な事例が掲載されました。例えば[基本給を職業能力 ・ 経験において支給する場合、 無期雇用フルタイム労働者と同一の職業経験・能力を 蓄積している有期又はパー トには、 職業経験 ・ 能力に応じた部分につき、 同一の支給をしなければならない。

また、 違いがある場合は、 その相違に応じた支給をしなければならないとか、「会社の業績等への貢献に応じて賞与を支給しようとする場合、フルタイムと同一の貢献であるパートには、 貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。 また、 貢献に違いがある場合、 その相違に 応じた支給をしなければならない」とされています。

後者を実現するのであれば、パートタイマーで あっても貢献度に応じた賞与は支給しなければならないということになります。今後のパートタイム労働法、 労働契約法、 労働者派遣法等の法改正の動きには要注意です。

<時間外労働の是正>

我が国は欧米諸国と比較して労働時聞が長く、仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働を是正し、かつ労働生産性を上げることが必要と会議の中で、提起されています。

この是正策の代表的なものとして「罰則付き36協定」があげられます。 現状、36協定における時間外労働については原則として1ヶ月45時間、 1.年で、360時間とされていますが、罰則等による強制力がない上に、臨時的な特別な事情がある場合は労使の合意の上で「特別条項」を締結した場合は、実質的に上限に関する法的規制がありません。

そこで 「働き方改革実行計画」では、時間外労働の限度時闘を原則、月45時間、かつ、年360時間とし、違反には以下の特例を除いて罰則を課すこととしました。

また、 特例として臨時的事情がある際に労使合意による協定が締結された場合(特別条項)でも、上限を年720時間(=月平均 60時間)とされています。この上限については①2~6ヶ月のいずれの平均においても休日労働を含んで80時間以内であること、②単月では休日労働を含んで100時間未満であること、①原別である月45時間を超える上記①②の特例については年 6回を限度とする、となっています。

この他にも「勤務間インターバル制度(前日の残業含む終業後から翌日の業務開始まで一定時閣を確保する努力義務)Jや「パワハラ対策、メンタルヘルス対策jなどが挙げられています。 なお、上記はあくまでも計画ですので、実際どうなるかは法改正が成立するまではわかりません。

<柔軟な働き方の環境整備>

働きながら子育てや介護を両立できる働き方として「テレワーク」の普及を目指していきます。 具体的には労働者が自宅等で働く[雇用型テレワーク]のガイドラインの改定や、長時間労働を招かないような労働時間管理の仕方、 サテライトオフィス勤務やモバイル勤務等が整備されていく方向です。

<女性・若者が活躍しやすい環境整備>

女性が育児等で離職した後、教育機関で職務遂行能力を向上させるためのリカレント教育を支援して、再就職に役立てたいと考えられています。 具体的には雇用保険法における教育訓練給付金の金額と期間の充実等です。

その他にも女性活躍推進法の強化や配偶者控除の収入制限を103万円から150万円への引上げ等 が計画されています。

<病気の治療と仕事の両立>

病気を治療しながら仕事をしている人は労働人口の3人に1人と多数を占めているが、病気を理由として仕事を辞めざるを得なかったり、仕事を続けていても職場の理解が乏しいなどの状況があるため、会社の意識改革と受け入れ態勢の整備を進めていく。

その過程において産業医の強化や、仕事と介護を支援する「両立支援コーディネータ-」の活用等を整備するとされています。上記の他にも「子育て介護等と仕事の両立、 障害者の就労」「転職、 再就職支援」「教育環境の整備」「高齢者の就業促進」「外国人材の受入れ」等が計画されています。 これらの今後の動さによっては、会社は大きな影響を受けるものと推測されます。