EU諸国を中心とした諸外国の付加価値税を採用した国々の制度と、日本の消費税制度を比較し、今後の日本の消費税制度はどのような方向に進むべきかについて検討します。

まず、単一税率で、比較的シンプルな構造となっているわが国の消費税と違い、複数税率制度を採用しているEU及びOECD加盟国(アメリカを除く)においては仕入税額控除についてはインボイス方式が採用されている。わが国においても、将来、仮に複数税率化する場合には、インボイス方式を導入すべきとの立場を政府税制調査会が明確にしています。

とりわけドイツのように複数税率制度の下で簡易課税を残すものとする場合には、本則課税適用者と簡易課税適用者の間における事務負担のバランスの問題も考慮に含めつつ、インボイス方式の導入の適否を真剣に検討しなければならないと考えられます。

ただ、他方、インボイス導入についての慎重論もあり、「実際の税務計算においては、インボイスに記載された税額を合計すれば足りるというものではない」という指摘や、「インボイス方式による積上計算では誤りがあった場合の検証が困難である」といった指摘があります。

さらに、インボイス方式の前提となる登録番号制度・納税者番号制度に対しては、プライバシー保護の観点から反対する立場や、税の捕捉性が高まることを嫌う事業者達から、根強い反対論があります。

しかし、今後消費税率を引き上げることとする場合には、何らかの方法により逆進性を緩和する必要がある。たとえば複数税率制の採用、又はカナダ型の給付金制度を採用は、その前提として事業者番号登録制等のインフラの整備は必要不可欠です。

また、昨今においては電子商取引が増大しており、取引自体がペーパーレス化することで課税の根拠資料が不明確化している問題がある。ちなみに、EU諸国等にみられるインボイスは紙で発行されることを前提としているが、このようなペーパーレス化にも対応する必要があることから、EU加盟国においては、2001年のインボイス指令により、電子取引に対応した電子インボイスの普及が図られた。この指令に迅速に対応した国として、ドイツが挙げられます。

ドイツでは2002年より、電子署名を付した電子計算書もインボイスとみなすとして、いち早く電子インボイスに対応しまし。わが国においても消費税についてすでに電子申告・納税手続が利用可能で2020年より大法人については電子申告義務化とされる予定ですが、将来的に仕入税額控除の方式が変更され、インボイス方式に移行するときには、これについても電子化への対応がより一層強められることになると考えられます。